「終生にわたる事業と運営・体制の構想」に係る守る会の提言(1)(案)
―恒久救済完遂に向けた守る会の組織的協力について―
1. 「三者会談方式」における守る会の役割と課題
(1)「三者会談方式」による被害者救済事業への守る会の組織的協力
守る会は、三者会談確認書締結以降、組織として救済事業の発展に力を尽くしてきた。
その第一は、三者会談確認書調印団体として「三者会談方式」による救済事業を守り発展させてきたことである。「三者会談方式」とは、被害者団体である守る会と加害企業である森永乳業と国(厚生省、現厚労省)が、それぞれの立場で被害者救済に対する責任を果たすというものである。
確認書締結から今日まで、その三者は全面的に救済事業に協力し、責任を果たしてきた。特に守る会は、救済の「受け手」としてだけでなく主体性をもって積極的に「三者会談」に参加してきた。その意義は大きく、もしこの主体的参加がなければ、救済機関が「第三者機関」となり、真に被害者のための救済とならなかった恐れもあったと考えられる。
守る会の組織的協力の第二は、救済事業を実施する機関であるひかり協会への協力である。ひかり協会の役員等の推薦、本部二者懇談会や各種検討委員会での意見要望提出、現地における二者懇談会への参加などにより、機構と運営に主体的な協力を行ってきた。
(2)守る会の組織的協力の展望を提言する必要性
守る会は1983年に組織名称を「こどもを守る会」から「被害者を守る会」と改称し、「三者会談」救済対策推進委員会(1984.3.7)において、「規約改正後の守る会会員の構成は、従来の運営の基本である両親のいずれか及び被害者本人に限定されている」旨を報告し、各団体が合意した。これにより、「三者会談方式」に責任を持つ守る会組織は高齢化した親から被害者本人が引き継ぎ、そして被害者の代をもって守る会運動を終えるという選択をした。
その後、守る会組織は被害者本人が中心になって「三者会談」は継続し、ひかり協会は存続している。しかし、それから30年以上経ち、被害者の高齢化が進み、「三者会談方式」やひかり協会への組織的協力を今後どのようにするのかについての将来構想を提言しなければならない時期を迎えている。
以上の状況を踏まえて、本「守る会の提言(1)」では、ひかり協会から提起された「終生にわたる事業と運営・体制の構想」に係る検討課題の一つとして、「三者会談」やひかり協会への守る会の組織的協力の今後の展望について提言する。
2.被害者の恒久救済完遂について
すべての被害者が亡くなるまで救済事業を実施することが、恒久救済の原則である。救済事業が開始されて以降、事業はすべて「三者会談方式」に基づき、ひかり協会によって実施されてきた。この形態を可能な限り継続すべきである。
しかし、一方、守る会会員は親と被害者本人に限られており、守る会組織の存続は時間的な限界がある。守る会は可能な限り恒久救済完遂に向けて組織的協力をするが、現時点で諸条件を考慮した構想を守る会が主体的に検討しておく責任もある。
3.今後の「三者会談」に対する守る会の組織的協力
(1)「三者会談」継続の重要性
「40歳以降の被害者救済事業のあり方」(以下、「あり方」)の基本には、救済事業の基本的前提として「三者会談確認書にある全被害者の恒久的な救済の目的に向かって、厚生省・守る会・森永乳業が確約した各事項を、三者が確実に実行し、そのために三者会談を継続することが、協会事業の前提となる」としている。「三者会談」の継続とひかり協会の存続は救済事業にとって極めて重要なことである。
そのため、(守る会会員が)おおむね健康寿命であるとされる75歳頃までは、現行と同程度の組織的協力をすべきである。その後の76歳頃から80歳頃までは、救済事業が滞らないための必要最小限の組織的協力をすべきである。
しかし、それ以降の守る会の組織的協力の継続は困難である。「三者会談」の構成団体から守る会が外れても、厚生労働省と森永乳業はひかり協会に対する協力を継続されたい。三者会談確認書に明記されている「問題が全面的に解決するまで「三者会談」を継続し、「恒久対策案」実現のために努力することを確約する」との約束を実現するためにも「三者会談」を継続し、厚生労働省・森永乳業・ひかり協会が協力して恒久救済を完遂させることが重要である。
(2)「三者会談」及び「三者会談」救済対策推進委員会への守る会の参加
①第三次10ヵ年計画期間中(2021~2030年/被害者66~75歳)
現行どおり「三者会談」及び「三者会談」救済対策推進委員会に出席する。
②第三次10ヵ年計画終了後の約5年間(2031~2035年頃/76~80歳頃)
守る会組織を存続させるように努め、「三者会談」及び「三者会談」救済対策推進委員会に構成員として出席する。ただし、規模・回数については必要性を検討したうえで縮減し、開催方法についてはWeb機器等を積極的に活用するなど、高齢化した役員も参加できるように検討されたい。
被害者がおおむね80歳となる2035年頃に、守る会の組織的協力は終了する。そのため、守る会が構成団体から外れた後の「三者会談」等について検討し、「三者会談」等会議運営規則を三者の合意を得て改正する。
③守る会の組織的協力の終了以降(2036年頃~/81歳頃~)
守る会が「三者会談」の構成団体から外れるが、「三者会談」等は厚生労働省・森永乳業・ひかり協会の三者によって継続されたい。被害者の実情や意見・要望については、ひかり協会を通じて反映させる。
(3)「三者会談」の継続と終了
三者会談確認書にあるとおり、問題が全面的に解決するまで厚生労働省・森永乳業・ひかり協会の三者による「三者会談」を継続されたい。
すべての被害者が亡くなり、恒久救済が完遂したことを確認したうえで、「三者会談」を終了する。
4.ひかり協会の運営に対する組織的協力
「三者会談」と同様、公益財団法人ひかり協会の存続は救済事業にとって極めて重要なことである。したがって、守る会の組織的協力については、以下のとおり可能な限り継続する。
(1)ひかり協会の機関・運営(評議員会、理事会、二者懇談会など)に対する組織的協力について
①第三次10ヵ年計画期間中(2021~2030年/66~75歳)
現行どおり、ひかり協会の機関・運営に協力する。
②第三次10ヵ年計画終了後の約5年間(2031~2035年頃/76~80歳頃)
全国本部として、ひかり協会に評議員・非常勤理事・監事を推薦し、評議員会・理事会に被害者代表として可能な限り参画する。また、本部二者懇談会において、ひかり協会の事業と運営・体制に対する意見・要望の提起を行う。会議の開催方法については、Web機器等を積極的に活用されたい。
都府県本部として、現地(ブロック)二者懇談会・行政協力懇談会への出席を継続する。ただし、現地(ブロック)二者懇談会の規模・回数については必要最小限とし、実施方法についてもWeb機器等を積極的に活用するなど、高齢化した役員も参加できるように検討されたい。
③ 守る会の組織的協力の終了以降(2036年頃~/81歳頃~)
守る会から評議員・非常勤理事・監事の推薦は行わないが、公益財団法人ひかり協会として規模は縮小しつつ運営されたい。公益財団法人による事業を継続し、評議員会や理事会等の運営ができるように本部事務局を存続されたい。
本部二者懇談会・現地(ブロック)二者懇談会及び行政協力懇談会への出席については終了する。
(2)公益財団法人ひかり協会による救済事業の継続と解散
公益財団法人ひかり協会による救済事業は、問題が全面的に解決するまで継続されたい。厚生労働省と森永乳業の協力を得ながら、被害者の実態や救済事業の達成状況などを考慮した救済事業を継続されたい。また、資料の整備・管理及び活用についても事業として継続されたい。公益財団法人ひかり協会の解散については、すべての被害者が亡くなり恒久救済が完遂したことを確認したうえで適切な時期にひかり協会理事会が提起し、厚生労働省・森永乳業・ひかり協会の合意を持って決定されたい。
5.将来的な守る会活動について
恒久救済完遂に向けた守る会の組織的協力については、上記の提言とおりである。この提言に沿った守る会の組織改編や機関運営の変更については、時機を見て、守る会の組織内で検討する必要がある。
なお、守る会の組織的協力の終了後に、「三者会談」やひかり協会による救済事業の進捗状況を見定め、滞りなく事業が継続されることを確認したうえで、2040年頃を目途に守る会は解散する予定である。