スウェーデンの福祉事情   視察報告

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スウェーデンの福祉事情視察報告   香川県本部 石川宗二

 

いつも介助タクシーでお世話になっているKさんの人脈とお世話でスウェーデン・フィンランドを訪ねました。同行者は現地交流会にいつも付添ってくれている香川大学4年のNさんです。7月18~27日まで成田1泊スウェーデン4泊フィンランド3泊機中1泊の9泊10日の旅でした。北欧は福祉が進んでいると以前から聞いていましたが、実際に訪ねて特にスウェーデンの素晴らしさに驚きと感動の連続でした。ストックホルム在住の障害者トミーさん宅を訪問した事を中心に報告します。

 

障害者トミーさんの日常生活

■プロフィール/男性、50歳位、交通事故で頚椎を損傷し首から下の身体障害があるため日常は電動車いすで生活。職業は福祉団体の役員。障害者が補助金を受けるために定期的に自治体に提出する申請書類作成の仕事をしている。障害者仲間だからこそ心を開いて相談ができると好評である。住居は、国が買い取って障害者に賃貸しているマンション(国が8割負担)20年来の女性パートナーと同居生活を送っている。明るく前向きな性格。車イスマークのタトゥーがユニーク。

 

自宅での生活の様子

・マンション玄関は、リモコンでドアがあく。障害者にとっては有難い。

・キッチンは下の収納棚がなく低いため車いすでも作業が可能。普段はパートナーが食事をつくってくれるが、キッチン自体を上げ下げできるので、健常者が使いやすい高さにも調整でき便利である。

・仕事部屋にはパソコンや書籍以外にも趣味の道具等が多数あり、日常生活を楽しんでいる様子が感じ取れる。

・それぞれの部屋間にドア、段差がなく、車イスが通れる広いスペースが確保されている。

・車の運転もするが、愛車はボタン一つでドアが開き、スロープが出てきて車イスごと運転席に移動できる。ロボットのようだった

・障害者本人の意志でアシスタントと介助の契約ができる

・気心の知れた友人知人に頼むケースも多いようである(もちろん介助のための研修は受けなければならない)

・1日に利用する時間はそれぞれのニーズに合わせて選べる

・その時間は日本よりはるかに長い(トミーさんは16時間設定可能)

・アシスタントも複数人契約しており、その目的や時間によって選択している

・「アシスタントに来てもらい、手伝ってもらう」というよりも「アシスタントを使いこなす」といった表現がふさわしい印象を受けた。

 

町に出てみると

・町全体がバリアフリー  道が広々としており段差も少ない。一部段差のある所でも介助者が手で動かせる簡易スロープがすぐ近くに置いてあり、簡単に対処できる。

・バスの乗り口が広くスロープ付。乗りやすいようにバスが傾き車内も広かった。最新式バスは入口床下からスロープが斜めに出てきて乗り易いようになっている。

・電車に乗り降りする際の介助は1時間前までに連絡しておけば、自治体が手配してくれるランプサービスがホームに待機してくれ行先ホームで降りるまでついてくれる。

・電車の中に入ると座席シートの上下げが出来、状況に合わせてスペースが有効に使える。もちろん車イス・ベビーカーのスペースも十分に確保できる。

 

短期滞在旅行者として良かった点

・バス・電車・路面電車等の公共交通機関が、安価(定額でしかも自己負担1割)で3日間乗り放題のフリーパスを購入できる。但し、日本で住んでいる自治体の英語の証明書が必要なので渡航される方は事前に手配しておくことが必須。ご注意ください。

 

障害者を支える高度なスウェーデンの障害者介助制度

直接給付システムで自治体が本人に直接補助金を支払う制度である。障害の度合いによって目的限定の補助金が支給され、自分自身の責任によって介助サービスの人の手配や自分に合ったバリアフリーの設計・工事を契約することができる。障害者には自己管理と自立生活が求められる。

以前は介助が家族の人であっても相応の対価を支払うことが許されていたが、財政難により今は支給されなくなった。

給付対象は0~65歳まで、週に最低20時間トイレや食事、コミュニケーション等「生活に不可欠」なニーズの介助を有する人が対象。ニーズの評価は社会保険基金の事務所でソーシャルワーカーが行う。

現制度に至るまでの長年の様々な経緯や現状における課題ももちろんあるようだが、日本では施設に入居して多くの人たちと共に同様のサービスを受け、住居は通常2~4人の共同部屋、スケジュールやサービス内容に選択の余地はない状態と比較するとその素晴らしさは一目瞭然である。もちろん身体障害者だけでなく知的並びに精神障害者もその対象となる。

 

教育環境の違い

日本であれば障害者は養護学校や同じ学校内でも特殊学級等で別扱いされるが、保育所~大学に至るまで健常者と全く同じ環境で就学できる。幼少期からのこの環境の違いは、障害者に対して偏見を持たないという意味において、また大人になってからの人権意識に与える影響は計り知れないのではないかと思う。

学費は高校までは無料、大学は自己負担2割で勉強できる環境が用意されている。さらに大学は65歳までに入学すれば良く、自身のライフスタイルに合わせて時期を選択できる。但し医大は65歳までに卒業することが条件とのこと。

 

感想障害者本人の主体的・自立的な意識と、それを支える長年培ってきた制度上としての福祉環境や、周囲の温かいサポートがあってこそ成り立つ素晴らしい社会がそこに具現化されていました。受動的で隔離・制限された環境の中で多くの仲間たちと共同生活するのではなく、自分の意志で生活しやすいバリアフリーの設計をし、介助者と契約し、自分のできる範囲の仕事や趣味を健常者と同じ生活空間の中で自立的に創り上げ、楽しむことができるのです。夫々の障害の度合いや能力は異なるとしても、それらに配慮する制度等で人権を尊重する国家国民性に刺激を受けるとともに歴史・哲学や特に前述の教育環境等の違いなのかな、と考えさせられた。

 

■最後に

多くの周囲の方々のサポートのおかげで、有意義かつ貴重な経験をすることができました。有難うございました。二宮さんがまとめてくれた旅行記全編がありますので、別途簡易印刷等で発行できたらな、と思っています。

全国のミルク仲間の皆さん、国家や歴史、環境等の違いはあるかもしれませんが、トミーさんの明るく前向きな精神を見習うとともに、私たちの親や関係者のご尽力に

思いを馳せ感謝するとともに、ひかり協会や守る会が用意してくれている自主的グループ活動、支部活動、ふれあい活動、現地交流会、健康懇談会等の制度を存分に活用して、今後とも皆で交流しながら、助け合いながら元気にやっていきましょう!

(守る会機関紙「ひかり」2017年2~4月号に掲載)

 

 

トミーさん宅で食事(右端が筆者
トミーさんのタトゥーは車椅子
電車の中で
女性店員と

 

  ひかり協会ホームページもご覧ください

    http://www.hikari-k.or.jp/

 

● 60周年記念冊子(還暦記念誌)500円で頒布中。お申し込みは、06-6371-5304(守る会 平松)まで。どなたにでもお分けします。

 

 

 

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